弟は何かを企んでいる8

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 抱かれる前にお腹の中を空っぽにして洗う、という部分も、この生活でかなり曖昧になってしまったと思う。なんせ、気づいたらベッドの上で喘いでいるのだ。その時に抱かれるまでするか、指だけで終わってしまうかは弟の気分次第なところがあって、もちろん、こちらが焦れて頼めば最後までしてくれるけど、毎回こちらが頼むまで抱いてくれないってわけでもない。
 想う相手に求められたら嬉しいのはお互い様だろうから、焦らされてると感じたら欲しいと口に出すのを躊躇うことはしないし、こちらばかりに欲しがらせない配慮もちゃんとされている。だからそこに不満はないんだけど。
 でもまだきっと、この先がある。
 あからさまに感度が上がったことも、抱かれる前にしっかり体の中を洗わなくてもキモチイイに集中できるようになってしまったと言うか、そこまで気にしなくなってしまったことも、間違いなく、弟の狙い通りだろう。
 別にそれがダメだとか嫌だとかってわけじゃなくて、こうなりたいとかこうしたいとか、もっと言語化して伝えてくれてもいいのに、とは思う。だって、こっちは自分のベッドでしたいとか、家の中でエロいことがしたい、程度にしか聞いてなかった。
 まぁ無理なのかな、って気もしてるけど。だってあいつ、脳筋だし。
 基本的には欲望に忠実で、そのための努力や労力を惜しむことがないけど、効率とかは多分あんまり考えてないし、色々実践してみて効果があったらラッキーくらいの感覚派っぽい感じがする。でもって、実は結構気が長い。
 この先があることは知っていて、それを狙っているのは確実で、でも、このお試し同棲みたいな一週間であれもこれもとは思ってない可能性は高かった。いずれは一緒に住む前提だから、一緒に住むようになってからでも全然遅くないとか思ってるかも知れない。
 だから問題は、多少無茶をしてでもさっさとその先へ辿り着きたいと考えてしまう、自分自身にあるんだろう。
 相手はこっちの体を相当気遣ってくれているのに。キモチイイは充分以上に貰っているのに。可愛いだとか好きだとか、何度もしつこいくらいに繰り返して、心もちゃんと満たしてくれるのに。
 でも、だって、その先の快感を知ってしまっている。怖いくらいに気持ちよくて、何度も頭の中が白く爆ぜて、泣きたいくらいに幸せで満たされたあの時間を忘れられない。
 犠牲は確かに大きくて、相手は絶対、無茶をさせたと思っているけど。翌日の、起き上がれないこちらを前に慌てまくったことも、しょぼくれきった顔も、忘れてないけど。
 だから、もう一度したいとか言えないんだろうなって、わからないわけじゃない。でも言えないだけで、したい気持ちは間違いなくあると思う。
 だって、奥を突かれて痛いよりキモチイイ感じに体が変わってきたことを、めちゃくちゃ嬉しそうにしてたし。もっと奥に入りたいのかな、って動きをされたことだってあった。
 正直言えば、あの時は体が勝手に開いて、何がどうなってそんな深くまで入ってこれたのか、自分でもよくわかってないし、弟も多分わかってないんだろう。だからこっちの体の負担を考えながら色々試して、二度目が起こるのを待っている……のかも知れない。というか多分、そう。
 こっちだってその二度目を待ってるんだけど。ちょっとくらい無茶されてもいいって思ってるんだけど。なんてのは思いつきもしなくて、しかも、無茶していいからって直球でねだったら多分嫌な顔をするんだろう。もっと自分の体大事にして、って怒られそうだ。
 いやまぁ、直球でしてってねだるのなんてかなりハードルが高いから、実際にそんなことを口に出来る可能性はかなり低いけども。
 だって、いくら恋人になったからって、弟にこの関係を終える気が全く無いからって、あんな風に感じる体になる抵抗感はどうしたってある。もう知ってしまってるのに、あの快感を当たり前に求めるようになったらと考えるのは怖かった。もう一度を期待するくせに、不安や恐怖はしっかり抱えている。
 この膠着状態が見えているのは間違いなく自分だけだ。そして多分、自分から動かないとこの休みのうちに進展するのは難しい。
 弟みたいにもっと気長に、いつかはもう一度、とか思えれば良いんだけど。でも感度を上げたり、抱かれる前の処理を曖昧にしたり、なんてのが弟の狙いに入ってるとか思ってなくて、抱き潰される気満々で来てしまったというか、要するに、めちゃくちゃ期待してた反動が身の内に燻っている。
 だって、この休み中にもう一度、ああなれるんだろうって思ってた。
 なのに初っ端から抱き潰さない宣言をされてしまった上に、体の負担がどうとかで指でばっかり弄られて、合間合間にちゃんと気持ち良く満たされるようなセックスもしてるはずなのに、足りないって思ってしまう。
 3週間、オナニーすらしなくても平気な体だったはずなのに。なんでこんなことになってんだろうと思わずにいられなかった。

続きました→

 
 
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